仕事から帰ってくると、忙しい義姉は帰っていた。直腸脱は完納していなかった。義母は椅子に座って、テーブルに両足をのせた姿勢で座っていた。

お義姉さんにお尻やってもらわなかったんですか?

やってもらわない。
まる子さん…お尻のやろっこは大きくなってるの?
トイレに行って座ったら、今まで見えなかったんだけど今日見えたの

そうですね。初めてみた時は卵大でしたけど、今は手首から先の拳丸ごと位の大きさになってますね。なので、このまま放置すると更に腸が飛び出してくるでしょうから手術しかないでしょうね。
と伝えると

そうねぇ…。
あ、それはそうとまる子さん…
と、違う話をしてはぐらかすので直腸脱を完納して速やかに部屋を出た。紹介状を持って受診する日がいよいよ近づいているので不安になっているようだ。
そして当日。義母が用意した荷物で鞄は3個にもなっている…。お尻に敷く円座、背中や背中の隙間に当てるクッションや前回買った超小さい座布団、着替え、おむつの替え、タオル、水筒…絶対使うわけない杖…それを全て私と義姉で持つし、病院では車椅子がいいとのこと。なので私は貴重品とハンカチのみの最小限の荷物にした。
車に乗るところから大仕事で、円座をセッティングし、義母の手を引き、車に乗せたら背当て用のクッションを義母の好みの位置に合わせる(これに時間がかかる)。病院に着いたら、私が車椅子を取りに行ってくる間、義姉は車から義母を下ろす。車椅子に円座をセットして背当てのクッションを義母の好みの位置に合わせ、帽子を被せて、私は荷物を義姉は車椅子を押して院内へ。私が受付をし、紹介され診察してもらう外科へ移動。
担当の医者が義母を見た瞬間顔が曇ったのが分かった…。嫌な予感がした。

う〜ん。ずいぶん小柄で華奢だねぇ…

もう、ずっと腸が出っ放しでまともに座っていられないんです。
それに便漏れ、尿もれもしていて…。
私が2時間おきに時間が合えば入れてるんですけど、タイミングが合わないと8時間放置することもあって。生活の質も落ちているので、こんな状態を続けてていいと思えません。
食事のとき以外は寝たきりで、体力も随分と落ちていたし、便秘は更に強固なものになりこのままいけば確実に寝たきりになると説明したが…

女王さん。まぁ…言っても分かんないよね〜。
高齢だとね、手術よりも入院中の認知症の方が怖いんだよね。
ねぇ、女王さん。認知症になりたくないよねぇ。手術なんてしたくないよねぇ…

先生、そうなんですよ。
私が認知症になったら、家族に迷惑かかりますでしょ?それが心配で。
家族が崩壊したらどうしようって思うんです。

もう、迷惑かかりまくってますよ。どうしようじゃねぇよ。
家庭崩壊も時間の問題というかもう爪楊枝一本で支えてる状態ですよ
手術をしたくない義母と医者のフィーリングが一致したので義母は饒舌に語りだした。

お嫁さんは、この病気が緊急性のないことも分かってるよね?

緊急性がなくても2時間おきに呼ばれてお尻やってて、私の吐き気がずっと止まらないし、仕事もしてるのにずっと呼ばれて行動が制限されて、食事以外はずっと寝たきりでお尻に腸が挟まった状態で歩きづらいだろうし、便秘もひどいので腸を動かすために歩くことを勧めても拒否されて、便漏れも尿もれもしてるからますます外に出ない。風呂に入ることも出来ない。このままでは本当の寝たきりになるので私は義母のためにも家族のためにも手術してほしいです。

う〜ん。分かるよ?でもねぇ…。
ん〜…外科では決められないから明日、循環器内科で体が手術に耐えられるか検査してもらって。
え?何しに来たんだ…。明日は仕事だ…。これまでも義母の体調不良でちょいちょい仕事を急遽休んでいる…仕事を休むとなるとあまりよろしくないと感じる人もいるので休みづらいのだけど…。私は主たる介護者で、のっぴきならない状況だから仕方ない休もう…。
医者は小柄な義母が車椅子で現れたし、医者のいうことへの反応も鈍かったので認知症気味と判断したんだと思う。医者には繰り返し、現状を訴えていくしかない。義母は小柄で華奢に見えるが神経は私なんかよりずっと図太い。
明日、循環器内科を受診するので今日までの経過と現状をしっかり紙に書いて出すことにする。が、その準備をしている間にも2時間おきに呼び出されて完納している…。

今日のまる家の晩ご飯
- しらすサーモン丼
- だし巻き卵
- カニカマときゅうり わかめの酢の物
- ぬか漬け
- しじみの味噌汁